仕組みづくり

仕組み

権限の分散化と仕組み

 組織が大きくなりトップ(リーダー)一人で全ての意思決定を行うのが難しくなると、権限を分散する必要が出てきます。その場合、通常の業務範囲内で反復して発生し、あらかじめ定められた手続きにより行なえばその結果が明確である意思決定については権限を委譲を行い、逆に過去の経験等に頼ることが出来ず、またあらかじめ定められた手続きに頼ることができない意思決定は、トップがその権限を持ち続け意思決定を行います。

 しかしながらトップとしては、今まで自ら行っていた意思決定を他者に委譲することは多少なりとも不安があります。その不安を解消する手段が、『仕組み』の構築になります。委譲する事項については、通常の業務範囲内で反復して発生する事象であるため、社内規程やマニュアルを整備し『仕組み』を構築することで、その事象が発生した際『あらかじめ定められた手続き』で処理を行えば、その結果は明確であり、大きく逸脱することは無くなるからです。

 『仕組み』を構築することで権限委譲はスムーズに行えるようになり、また日々改善を行うことで、業務の効率化等も図れ業績のアップにもつながります。

人を責めるな・仕組みを責めろ

 トヨタ自動車には「人を責めるな・仕組みを責めろ」という言葉あり、これを基本姿勢として繰り返し口にしていると聞きます。

 問題が発生すると、問題を起こした社員を責め立てる光景をよく目にしますが、果たしてそれが長期的な企業成長につながるのでしょうか?問題を起こした社員を責めれば、再び叱責されるのが嫌で短期的には問題が無くなるのかもしれません。しかし、再び問題を起こせば今度は『隠そうとする』でしょうし、本人だけを責めても別の社員が同じ問題を起こすかもしれません。また、例え叱責された社員の努力で問題が起こらなくなったとしても、それはその社員個人の「資質・ノウハウ」であって、その社員が異動、もしくは叱責が続き嫌になり退職してしまえば、またいちからやり直しとなり、問題解決には何一つ前進していません。

 一方で「仕組み」は、一度構築すれば会社のノウハウとして残り、人の異動や退職に左右されません。更には、個人の頑張りには限界がありますが、「仕組み」には限界が無く積み上げが可能です。例えば「人件費削減」には、勤務状況管理→標準作業マニュアル化→標準時間設定→賃金制度構築→評価制度導入・・・など「仕組み」を積み上げることで、改善・改革は限りなく進みます。

 ただし「仕組み」のデメリットは、「仕組み」の固定化に時間が掛かり、導入しても結果は早期には出ない点です。そのため短期な結果を求め「やる気・意識が足らないのだ」と短絡的に原因を結び付けてしまい「個人攻撃」に走りやすくなります。「管理者は意識が弱いと怒る」→「部下は怒られるので仕方なくやることで短期的成果」→「直ぐにやらなくなり管理者は再び叱責」→「度々怒られるのが嫌になり部下は退職」→「新人部下が来てまた怒る」という無限ループに陥ってしまいがちです。また「叱責」は、トップ→管理職→一般社員と次なる「叱責」を生み根本的な解決にはつながりません。

 個人に対する「叱責」を全て否定はしませんが、「叱責」する場合には前提として「相手が耳を傾ける」かを見定めてから行う必要があります。「この人ならば言われても仕方ない」というような人間関係が構築されていないまま「叱責」しても何も効果はなく、寧ろ相手に「嫌悪感」を抱かせるだけです。
 
 「仕組み」を構築する前に、問題解決をしようと個人の「やる気・意識」を責めても、根本的な問題解決にはなりません。問題解決には「仕組み」を責め続け構築・修正を繰り返さすことが重要です。